調査団報告2025年9月

絡まる植物の話

季節はようやく秋を迎えました。

街路樹の桜並木はだいぶ葉を落とし、ケヤキの葉もカサカサと音を立ててそろそろ落葉を迎えるようです。

しかし山はまだ濃い緑色をしていて、よく見るとつる植物で一面覆いつくされているような場所もあります。

生物多様性センター近くの林も、大木に絡みつくつる植物がたくさん見られます。

山を覆う植物といえば、まず初めに思い浮かぶのはクズ(葛)でしょうか。葛根湯でお馴染みの、日本のつる植物の代表格です。

電柱に絡みつき電線を伝って緑のカーテンを広げたり、山の斜面をまるで緑の滝のように覆うこともあります。

全身をすっかり覆いつくされた樹木は、まるで有名な蔵王の樹氷、スノーモンスターならぬ、葛モンスターが出現したようです。

このような状態を「マント群落」と言うそうです。

一見荒れ果てた山のイメージですが、寒さから身を守るマントのように、森の中の乾燥を防ぎ、一定の温度を保つなどの役割を担うこともある大切な植物群落だと言われています。

クズのように、他のものに絡みついて伸び続ける植物は他にもたくさんあります。

絡みつく方法も様々で、くるくると巻き付くものや、吸盤や根を使うものなど、全部で6種類ほどあるそうです。

巻き付く方法と代表的な植物の名前をまとめました。

巻き付く方法代表的な植物
①主軸となるつるで巻き付くフジ、スイカズラ、クズ
②葉の付け根、葉柄で巻き付くセンニンソウ、ヒヨドリジョウゴ
③巻きひげで絡みつき、先端を吸盤状
 にして張り付く
カラスウリ、ノブドウ
④棘や鉤で引っかけながら成長するノイバラ、カギカズラ
⑤つるを地面に這わせて伸びるハマゴウ
⑥付着根を出して樹木や岩を這い登るキヅタ、テイカカズラ

自分で身体を支える丈夫な幹を作る代わりに、他のものに寄りかかり、ひたすら光を求めて伸びるつる植物は、昔から紐や籠などに加工されており、近年では壁面緑化や緑のカーテンとしても利用されています。

ガーデニングでは厄介者扱いされることが多い植物ですが、昆虫や鳥、小動物に棲みかや食べ物を提供し、もしかすると、強風による倒木から樹木を守る働きをすることもあるかも知れません。

様々な種類のつる植物。皆さまからの投稿をご紹介します。写真下に種名と団員番号を記しました。

2025年9月の皆さまからの報告は318件でした。

内訳は昆虫252件、鳥類24件、維管束植物12件、クモ・ムカデなど10件、両生類7件、は虫類5件、貝類4件、哺乳類2件、エビ・カニ類(甲殻類)1件、地衣類・菌類(キノコなど)1件でした。

また、調査対象の生き物は25件、調査対象以外の発見生物は293件でした。

参考文献

谷川栄子著・本間秀和写真『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版(2015)

C.ダーウィン原著 渡辺仁訳『よじのぼり植物』森北出版株式会社(1991)

9月16日に生物多様性センターのホームページに不具合が生じ、復旧まで2週間にわたりウェブサイトを閲覧できない状態が続きました。

団員の皆さまには大変ご迷惑をおかけいたしました。

9月分の生き物報告の集計は、投稿の締め切りを従来の月末(9月30日)から2週間延長し、10月15日までと致しました。

(見つけた日が9月中の報告に限ります)。

10月以降は、従来通りその月に見つけて投稿いただいたものを集計して報告します。

調査団報告 2025年9月

9月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

ただし、無許可で報告データを公開することを禁じます