調査団報告2023年11月

身近に生息する絶滅危惧種:ハイイロフサヤスデ

ハイイロフサヤスデは体長が約2.5mmほどのヤスデの仲間です。これまで、ハイイロチビフサヤスデハイイロチビケフサヤスデと呼ばれることがありましたが、現在は主にハイイロフサヤスデと呼ばれています。今号では、千葉県内でのハイイロフサヤスデの分布、生息環境、保全上の位置付けなどを紹介します。

以降の段落より、ヤスデや生物の集合体が表示されます。

苦手な方はご注意ください

ハイイロフサヤスデ 
撮影者:a0285
ハイイロフサヤスデの拡大画像

体は頭部と11個の胴節(体節のこと。体の裏側を指すため、この写真では見えない)からなり、歩肢(脚のこと。体の裏側にあるため写真では見えない)は13対あります。また、尾部にブラシ状の毛の束があるのが特徴です。産卵は夏に行われ、孵化後は5~6令で越冬し、翌年の初夏に成体になると言われています。

分布

ハイイロフサヤスデは本州と四国に分布するヤスデの仲間です。千葉県内では、成田市 、千葉市、市原市、東庄町等から分布記録があるとされています。主に北総地域から分布が報告される傾向にあります。

生息環境

ハイイロフサヤスデの集団
撮影者:a0389

公園や社寺林等に生えているケヤキ等の樹皮下に生息しています。樹皮をめくると、大小様々な大きさの個体が数多く見られることがあります。

なお、樹皮めくりは樹木や越冬中の昆虫等に大きな影響を与える可能性があるため、「樹皮をめくりすぎない」、「めくった樹皮は元に戻す」など、樹木や昆虫にも配慮した上で生き物観察を楽しみましょう。

千葉県内での保全上の位置付け

2019年度改訂版の千葉県レッドリスト(参考資料)では、ハイイロフサヤスデはランクA(最重要保護生物)に選定されており(ハイイロチビフサヤスデの和名で記載されています)、保全の優先順位が高い種の1つとなっています。

レッドリストのランクが非常に高くなっている理由として、すみかとなるケヤキの伐採による生息地の消失や、県内で確認されている分布地点が限られることなどがあげられます。しかし幸運にも、近年になって生命のにぎわい調査団員からのハイイロフサヤスデの発見報告が投稿されるようになってきました。しかも、ある限られた地域からではなく、千葉県内の様々な市町村から複数の発見報告が投稿されるようになりました。例えば、千葉市内にある公園のケヤキの樹皮下など身近なところからも発見されています。

近年になって分布情報が増えた要因としては、いくつかの可能性が考えられます。例えば、ハイイロフサヤスデが樹皮下に生息することから、単に分布が確認しにくかったこと(そもそも調査が実施されにくい)や植樹等とともに分布域が人為的に拡大していることなどが考えられます。

調査対象生物でなかったとしても、県内広域を対象とした調査団員による調査によって、注目種の分布が重点的に調べられることで、「注目種の生息状況」や「知られていない生物相」を明らかにすることに繋がるかもしれません。そこで、ハイイロフサヤスデと思われるヤスデを発見された際は、是非とも写真に収め生命のにぎわい調査団生き物報告まで投稿していただけますと幸いです。

参考文献

Karasawa, S., Kawano, K., Fukaya, S., and Tsurusaki, N. 2020. Upgrading of three subspecies of Eudigraphis takakuwai to the species rank (Diplopoda: Penicillata: Polyxenida: Polyxenidae). Species Diversity 25: 89-102.

調査団報告 2023年11月

11月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

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