千葉県環境生活部自然保護課Chiba Biodiversity Center生物多様性センター

「千葉県の保護上重要な野生生物 - 千葉県レッドデータブック - 植物編」の発行について

平成11年6月7日

表紙写真

1.背景と目的

  1. Ⅰ.多種多様な野生の動植物は、自然環境を構成する生態系に不可欠の要素であるが、近年地球規模での自然環境の悪化等から多くの種が絶滅の危機に瀕しているといわれており、野生動植物の保護は国際的な課題となっている。
  2. Ⅱ.このような状況の中で、本県においては、千葉県環境基本計画で掲げた「自然との共生」の理念のもとに「生物多様性の確保」という観点から、県内における絶滅のおそれのある野生動植物の現状と保護のあり方を明らかにするため、この度千葉県レッドデータブック植物編をまとめたところである。
  3. Ⅲ.本書は、法的規制等の強制力を伴うものではないが、多くの県民の方々に貴重な野生生物の現状を理解し、自然との共生のあり方を考えていただくことを目的として作成したものである。

2.選定の方法

  • ・編纂にあたり、11名の専門家からなる「千葉県レッドデータブック作成検討委員会」を設置し、この委員会において、本レッドデータブックが扱う分類群と対象範囲、レッドデータ種選定の基準と選定方法、選定にあたっての情報収集と整理、及びレッドデータブックの記載内容などの全体的な検討を行った。
  • ・種の選定にあたっては、県下における野生生物種の分布状況を把握するため、各種の文献、収蔵標本などの基礎的な情報収集から開始し、とりまとめられた情報から、それぞれの分類群において絶滅の危機に瀕している種を抽出する作業を行なった。その際、生物種の現在の分布域の広さや個体群の大きさなどの種そのものに関する情報に加え、生息・生育地の減少、採取や捕獲などの圧力の大小など、種の存続に関わる人為的な影響についても考慮した。なお、分類群によっては、収集・整理しうる情報が非常に少なく、すべての種について客観的に評価できるデータがととのわない場合もあった。それらについては、専門家の知見により共通の評価基準に照らし合わせ、ふさわしい種を選定することとした。
  • ・植物群落については、収集・整理した群落情報の中から以下の3つの条件を満たす群落を抽出した。
    1. 1.自然林または自然草原と判断された群落
    2. 2.特殊な立地に成立する群落
    3. 3.本書に掲載されたRDB種を1種類以上含む群落
  • しかし、今回得られた群落情報は地域が限られているほか、統一的な情報を得ることができなかったことから、掲載群落を選定するにとどめ、カテゴリー区分を行わなかった。

3.選定の対象

本書が対象とした分類群は、以下のとおりである。

  1. Ⅰ.植物種
    1. 1.維管束植物
    2. 2.蘚苔類
    3. 3.藻類
    4. 4.地衣類
    5. 5.菌類v
  2. Ⅱ.植物群落

4.千葉県レッドデータブック共通評価基準及びカテゴリー

レッドデータブックに掲載されることは、対象種が絶滅の危機に瀕していると同時に、その種が保護を必要としていることを示している。この点を踏まえ、評価基準は保護の必要度の高さから区分がされている。現在、県内で生息・生育が確認されている種のカテゴリーは4段階とし、現在まで長期にわたって確実な生息・生育情報のない、消息不明または絶滅したものを加え、全体で5段階とした。

千葉県レッドデータブック共通評価基準及びカテゴリー
X 消息不明・絶滅生物
かつては生息・生育が確認されていたにもかかわらず、近年長期にわたって確実な生存情報がなく、千葉県から絶滅した可能性の強い生物。ただし、すでに保護の対象外となったかに見える生物であっても、将来、他の生息・生育地からの再定着や埋土種子の発芽などにより自然回復する可能性もありうるので、かつての生息・生育地については、現存する動植物と共に、その環境の保全に努める必要がある。
A 最重要保護生物
個体数が極めて少ない、生息・生育環境が極めて限られている、生息・生育地のほとんどが環境改変の危機にある、などの状況にある生物。放置すれば近々にも千葉県から絶滅、あるいはそれに近い状態になるおそれがあるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は最大限の努力をもって軽減または排除する必要がある。
B 重要保護生物
個体数がかなり少ない、生息・生育環境がかなり限られている、生息・生育地のほとんどで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば著しい個体数の減少は避けられず、近い将来カテゴリーAへの移行が必至と考えられるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は可能な限り軽減または排除する必要がある。
C 要保護生物
個体数が少ない、生息・生育環境が限られている、生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば著しい個体数の減少は避けられず、将来カテゴリーBに移行することが予測されるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響及び要因は最小限にとどめる必要がある。
D 一般保護生物
個体数が少ない、生息・生育環境が限られている、生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある、などの状況にある生物。放置すれば個体数の減少は避けられず、自然環境の構成要素としての役割が著しく衰退する可能性があり、将来カテゴリーCに移行することが予測されるもの。このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響は可能な限り生じないよう注意する。

5.選定の結果

本書に掲載された種は、シダ植物83種、種子植物599種、蘚苔類58種、藻類25種、地衣類36種、菌類30種の計831種である。また、掲載された植物群落は141群落である。

千葉県に自生する在来種は、維管束植物(種子植物とシダ植物)では、約2,700種であり、その内の約25%が本書に掲載されている。また、カテゴリーXの消息不明・絶滅生物に選定されたものは、維管束植物では42種、維管束以外の植物では18種であり、既に県内から、多くの植物種が失われた可能性が高いことが明らかとなった。さらに、カテゴリーAの最重要保護生物にも101種が選定され、現在多くの種が絶滅の危機に瀕していることを示している。

千葉県の保護上重要な野生生物 分類群・カテゴリー別掲載種数
カテゴリー

分類群
X A B C D 総計
シダ植物 13 14 18 26 12 83
種子植物 裸子植物 0 0 0 2 4 6
被子植物 双子葉類 離弁花類 7 11 29 78 58 183
合弁花類 5 8 28 84 39 164
単子葉類 17 24 59 95 51 246
維管束植物 計 42 57 134 285 164 682
カテゴリー

分類群
X A B-D * 総計
蘚苔類 5 13 40 58
藻類 1 17 7 25
地衣類 12 11 13 36
菌類 0 3 27 30
維管束植物以外の植物 計 18 44 87 149

* 維管束植物以外の植物では、カテゴリーB、C、Dを区分しなかった。

掲載種リストダウンロード(44KB:CSV)
分類群 掲載群落数 選定群落ヵ所数
植物群落 141 1,223
掲載群落リストダウンロード(7KB:CSV)

6.その他

  1. 本書は、県内の各市町村、中学校、高等学校、図書館、各県民センターに配布してあります。
  2.  貸出しについて
    1. 受付    環境生活部自然保護課生物多様性センター (電話:043-265-3601)
    2. 期間    原則 一ヶ月以内
    3. 閲覧場所  各県民センター