調査団報告2022年7月

海洋生物の発見報告を随時募集しています

2008年に生命のにぎわい調査団が発足されて以降、団員の皆さんより多くの生き物報告が投稿されてきました。例えば、イタチ、カワセミ、ニホンヤモリ、ミナミメダカ、ヤマトタマムシ、ヤマユリ等の多くの調査対象生物を中心に、県内各地から多くの情報が寄せられてきました。しかし、これらの陸域や淡水域に生息する生き物と比較すると、海辺で生き物観察をする機会が少ないためか、海洋生物の報告はあまり多くありません。

そこで、今回は生き物報告の調査対象生物であるサキグロタマツメタや、調査対象生物ではないけれども海辺でよく観察される海洋生物をいくつかピックアップして紹介していきます。

生命のにぎわい調査団ではハリセンボンツマジロナガウニスベスベマンジュウガニサキグロタマツメタマツモ(海藻)の海洋生物5種を調査対象生物として設定しています(詳しくはこちら)。

今後、海辺で海洋生物(特に調査対象の5種)を発見された際は、是非とも生命のにぎわい調査団まで投稿していただければ幸いです。

サキグロタマツメタ(外来種)

(撮影者 : 千葉友樹)

サキグロタマツメタは中国大陸、日本国内では有明海などの限られた地域にしか生息していなかった貝類ですが、中国産などの外来個体群が水産物に混入して日本各地の野外へと導入され、国内で分布を拡大させていると考えられています。水産物のアサリを食い荒らすことから、漁業被害を引き起こす厄介者として問題になっています。

千葉県にはもともと生息していなかった外来種の1つとして、サキグロタマツメタを生命のにぎわい調査団の生き物報告の調査対象生物として設定していましたが、調査団発足の2008年以降サキグロタマツメタの報告はほとんどありません。そこで、もし潮干狩りや海辺で遊んでいる際にサキグロタマツメタを見かけた際は、是非とも生き物報告までご投稿ください。

(撮影者 : 千葉友樹)

サキグロタマツメタの貝殻はタニシ類に似ています。移動する際に、貝殻から軟体部が大きくはみ出るのが特徴的です。

(撮影者 : 千葉友樹)
(撮影者 : 千葉友樹)

上の写真はどちらもサキグロタマツメタの卵嚢です。帯状の卵嚢には多くの卵が含まれています。サキグロタマツメタの卵嚢は特徴的な形態をしていますので、もし似たような卵嚢を見かけた際は、是非とも生命のにぎわい調査団の生き物報告まで(可能であれば写真も添付して)ご投稿ください。

アオイガイ

(撮影者 : a1407)

アオイガイには貝殻があるため巻貝や二枚貝等の仲間だと思われるかもしれませんが、見た目から分かるように実はタコの仲間なんです。別名カイダコと呼ばれることもあります。

貝殻を持っているのはメスだけで、オスは貝殻を持っていません。メスは貝殻の中に卵を産んで孵化するまで守ります。

オニイソメ

(撮影者 : a1407)

オニイソメは体長50cm以上、ときに100cmを超える大型の多毛類の仲間です。潮間帯付近の岩の割れ目等に生息しています。丈夫な顎で噛みついてくることがありますので、観察の際は注意してください。

チチュウカイミドリガニ(外来種)

(撮影者 : a0389)

チチュウカイミドリガニは甲長6cmほどのカニで、体色は緑灰色から緑褐色をしています。本来、地中海に生息する外来種で、船のバラスト水に紛れて日本に侵入したと言われています。在来のカニ類と餌資源や生息場所等を巡って競合したり、在来の貝類、多毛類や小型甲殻類等を捕食することで生物多様性を低下させる恐れがあります。

チチュウカイミドリガニは千葉県内で分布を拡大させている可能性があります。侵入状況を把握する上で発見場所に関する情報を収集することはとても重要ですので、見かけた際は是非とも生命のにぎわい調査団までご投稿ください。

ウメボシイソギンチャク

(撮影者 : a0389)

ウメボシイソギンチャクは潮間帯付近で普通に見られるイソギンチャクの仲間です。2-4cmほどの大きさで、名前から連想されるように梅干しのような色をしています。水中では多くの触手が見られますが、干潮時に干上がったウメボシイソギンチャクは梅干しと見間違うような見た目をしています。

イトマキヒトデ

(撮影者 : a0389)

イトマキヒトデは千葉県沿岸の浅瀬で最も普通にみられるヒトデの仲間です。テトラポッドや漁港の岩壁等に張り付いていることもあります。

通常、腕は5本ですが、4本、6-7本、まれに9本の個体が見られることがあります。見かけた際は、是非とも腕を数えてみてください。

アカエイ(有毒)

(撮影者 : a0389)

アカエイは冬の間は海底に生息していますが、夏になると繁殖のために沿岸の浅い砂泥域へと移動してくるため、浅瀬の砂浜で遊ぶ際に出会った方もいるのではないでしょうか。

アカエイの尾の根元付近には毒棘があり、刺されると激しく痛み、最悪の場合死亡することがあります。観察する際は踏んづけたり、むやみに触って刺されないようくれぐれも注意してください。

アカクラゲ(有毒)

(撮影者 : a0389)

アカクラゲは春ごろに沿岸でよくみられる普通種で、長い触手を持っているのが特徴です。アカクラゲの触手には毒があり、触れると強い痛みを感じるので、海で遊ぶ際は刺されないように注意してください。なお、海岸に漂着していることもあるので、誤って素足で踏んでしまわないよう気を付けてください。

参考文献

千葉県. 2000. 千葉県の自然誌 本編7 千葉県の動物2 -海の動物-. 千葉県史料研究財団. 千葉県.

一般財団法人自然環境研究センター. 2019. 最新 日本の外来生物. 株式会社平凡社, 東京都.

NPO法人 武蔵野自然塾. 2017. 危険生物ファーストエイドハンドブック 海編. 株式会社文一総合出版, 東京都.

調査団報告 2022年7月

*希少生物は保護上の理由により、発見場所を非表示にする場合があります(緯度 : 35、経度 : 140 の位置を表示する設定にしています)。

7月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

ただし、無許可で報告データを公開することを禁じます

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お問合せ先:生物多様性センター 調査団事務局 <monitor@bdcchiba.jp>

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生き物を発見された際はまず、その生き物の写真を撮り、お手持ちの図鑑で調べてみてください。そして、「○○○」だと思うが特徴が少し違う、といったところまで調べていただけると助かります。
報告で種名が不明になっていた場合や、報告写真から判定して種名を変更した場合は、各月の報告一覧には、事務局で判定した種名を記入しています。
皆さんからいただく報告の中には、希少な生物の発見、生息状況の新たな発見、活き活きとした生きものの営み等の写真が多くあり、事務局としても大変楽しませていただいています。

外来種対策:外国産の生きもの・外来生物、国内でも他地域の生きもの・移入生物は、野外に放さないでください。
飼育した生きものは責任をもって、最後まで飼いましょう。外来生物によって、日本の在来の生物(植物、動物)は、大きな影響を与えられています。国内、千葉県の生態系と生息する生きものを守るためには、知る、調べる、行動する/駆除するなどが必要になっています。

外来生物に関する情報は

環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。

  • 外来生物被害予防三原則
  • ~侵略的な外来生物(海外起源の外来種)による被害を予防するために
  • 1.入れない
  • ~悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
  • 2.捨てない
  • ~飼っている外来生物を野外に捨てない
  • 3.拡げない
  • ~野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない。
  • お問い合わせ先:
  • 千葉県生物多様性センター
    「生命(いのち)のにぎわい調査団」
  • 〒260-0852 千葉市中央区青葉町955-2
    千葉県中央博物館内
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