調査団報告2022年5月

千葉県で分布拡大中のチョウ類

千葉県に生息するチョウ類の中には、近年分布を拡大させている種がいます。もともと千葉県には生息していませんでしたが、温暖化とともに西日本から分布を拡大させたものや人為的に放逐されたものがいます。代表的なものとして、温暖化とともに分布を拡大させていると言われているのがナガサキアゲハ、人為的に放逐されたと言われているのがアカボシゴマダラです。

生命のにぎわい調査団ではナガサキアゲハを生き物報告の調査対象種に選定しています。アカボシゴマダラは調査対象生物ではありませんが、生態系に多大な影響を及ぼすおそれのある特定外来生物であることから、分布などの生息状況を把握する必要があります。今回はこの2種のチョウについて紹介していきます。

ナガサキアゲハ(調査対象生物)

ナガサキアゲハ(Papilio memmon)はアゲハチョウ科の大型のチョウです。オスの翅(表)は全体的に黒色をしていますが、メスは前翅の基部に赤斑があり、前翅と後翅には大きな白斑が見られます。アゲハチョウ科の多くの種で見られるような尾状突起はありません。

オス(撮影者 : a1275)
メス(撮影者 : a0826)

ナガサキアゲハのもともとの分布域の中心は、1920年頃には四国南部や九州以南でしたが、温暖化に伴い分布を北方へと拡大させていると言われています。これは、冬季の気温が上昇したことでナガサキアゲハが越冬できるようになったためと指摘されています。このことから、温暖化による影響を示す環境指標生物として注目されています。近年では、千葉県を含めた関東地方の各地でも見かける頻度が増えており、生命のにぎわい調査団の生き物報告への投稿も年々増加しています。

ナガサキアゲハの分布拡大に繋がる別の要因として、餌場面積の増加もあげられています。ナガサキアゲハの幼虫の主要な食草は栽培ミカン類であるため、ミカン類の栽培面積の増大に伴ってそれを食べるナガサキアゲハの分布が拡大したのではないかとも指摘されています。現在では、温暖化と食草栽培の普及による影響の両方がナガサキアゲハの北上に繋がったものと考えられています。

アカボシゴマダラ(調査対象外)

アカボシゴマダラ(Hestina assimilis assimilis)はタテハチョウ科の中型のチョウです。春型と夏型で色彩が大きく異なることが特徴的で、春型は翅の表裏ともに地色は黒色で白斑があり、夏型はこれに加え後翅にいくつかの赤斑が入ります(春型には赤斑が薄く出る個体もいます)。

春型(撮影者 : a0826)
夏型(撮影者 : a0389)

アカボシゴマダラは中国、朝鮮半島や台湾が原産地で、もともと千葉県には分布していなかった外来種です。意図的な放蝶により導入されたものと考えられています。なお、奄美群島には在来亜種のアカボシゴマダラ(Hestina assimilis shirakii)が分布しており、外来のアカボシゴマダラ(Hestina assimilis assimilis)とは後翅の赤紋の色彩や形状が異なります。

特定外来生物であることから、在来生態系への悪影響が懸念されています。アカボシゴマダラの幼虫は在来種のゴマダラチョウやオオムラサキの幼虫と食草を巡る資源競争を起こす恐れが指摘されています。また、アカボシゴマダラの成虫(オス)はゴマダラチョウやオオムラサキの成虫(メス)への繁殖阻害(繁殖干渉と呼ばれます)を起こし、在来種のメス親の生存率を低下させたり、子孫を残しにくくするなどの悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。このような背景から、奄美群島に生息する在来亜種(Hestina assimilis shirakii)を除く種アカボシゴマダラ(Hestina assimilis)は特定外来生物に指定されています。

お願い

千葉県内に侵入したナガサキアゲハやアカボシゴマダラの分布拡大状況を把握する上で、皆様からの投稿が非常に有用な情報となります。今後はこれまでに得られた分布情報を整理して分布図を作成することにより、どの地域を中心に分布を拡大させているのか等、現状把握を行っていくことが望まれます。

もし、県内で上記2種のチョウ類を見かけた際は生命のにぎわい調査団の生き物報告までご投稿ください。

参考文献

● 北原正彦・入来正躬・清水剛. 2001. 日本におけるナガサキアゲハ(Papilio memnon Linnaeus)の分布の拡大と気候温暖化の関係. 蝶と蛾 52(4): 253-264.

● 吉尾政信・石井実. 2001. ナガサキアゲハの北上を生物季節的に考察する. 日本生態学会誌 51: 125-130.

● 日本チョウ類保全協会. 2012. フィールドガイド 日本のチョウ. 誠文堂新光社.

● 一般財団法人自然環境研究センター. 2019. 最新 日本の外来生物. 平凡社.

調査団報告 2022年5月 

*希少生物は保護上の理由により、発見場所を非表示にする場合があります(緯度 : 35、経度 : 140 の位置を表示する設定にしています)。

5月分のデータ(Excel)は以下のリンクよりダウンロードできます

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外来種対策:外国産の生きもの・外来生物、国内でも他地域の生きもの・移入生物は、県内に放さないでください。
飼育した生きものは責任をもって、最後まで飼いましょう。外来生物によって、日本の在来の生物(植物、動物)は、大きな影響を与えられています。国内、千葉県の生態系と生息する生きものを守るためには,知る、調べる、行動する/駆除するなどが必要になっています。

外来生物に関する情報は

環境省「 環境省HPー外来生物法のウェッブページ 」をご覧ください。

  • 外来生物被害予防三原則
  • ~侵略的な外来生物(海外起源の外来種)による被害を予防するために
  • 1.入れない
  • ~悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない
  • 2.捨てない
  • ~飼っている外来生物を野外に捨てない
  • 3.拡げない
  • ~野外にすでにいる外来生物は他地域に拡げない。
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