雨の季節が始まる頃となりました。
新緑をまとい、淡く輝いていた木々も、気が付けば鬱蒼とした緑に変わりつつあります。
明るい時間が日増しに長くなり、生命のにぎわいも格段に増えるこの季節、少し足を延ばしてみると、いつもとは違った新しい生き物に出会えるかもしれません。
とは言え、中にはできれば遭遇したくない生物もいるものです。
特にこの季節は、「ヤマビル」を挙げる方が少なくないのではないでしょうか。
かく言う私も、先日生きた姿を初めて見たときにはだいぶ動揺してしまいました。
できればこの生き物に血を吸われたくない。
今回は、この季節の山歩きで注意したい、ヤマビルについてご紹介します。
本州、四国、九州、沖縄に広く分布し、山地の渓流沿いなどの湿った場所に棲む吸血性のヒルですが、近年人里近くに分布を広げています。
千葉県でも、房総丘陵の広い範囲で見られるようになり、要因としてニホンジカの増加と担い手不足による山林の荒廃などが挙げられています。
蚊と違って、ヤマビルは寄生虫や感染症を媒介することはありませんが、吸血の際に出す物質、ヒルジンが原因で出血がとまりにくく、血を吸われた後に激しいかゆみが長く続くことがあります。
渓流沿いの林などを歩く場合、長靴は必須で靴下は厚手のものを履く。
樹上から落ちてくる(!)のを防ぐために、帽子をかぶって首にはタオル。
この、恐怖の「樹上から降ってくるヤマビル」が大きな誤解であることをご存知でしょうか。
このことを実証したのが、三重県の小中学生からなる「子どもヤマビル研究会」で、ヒルの生息域で体を張って試験を行った結果が本にまとめられています。
このほかにも、ヒルが二酸化炭素や熱に反応して集まることを実験で確認したり、ヒル除けとしてのストッキングの部分的有効性(繊維が邪魔をして吸い付くことはできないが、ヒルを寄せ付けなくする効果はない)を身をもって証明しています。
頭は自分で見ることができないので、「樹上から降ってくる」はことさら恐怖感をあおります。
上から降って来ないのなら、気を付ければなんとかなりそうな気がしてきました。
ヤマビルは降ってこなくても、首周りのガードはあったほうが良さそうです。
足元から登ってくるヤマビル対策は、長靴の中に入られないように気を付ける必要がありますね。
服の布地はある程度厚みのあったほうが良さそうです。もちろん服の隙間もしっかりガード。
虫よけと、万一のためにポイズンリムーバーもあると安心です。
千葉県では、ヤマビルについても情報発信をしています。
2021年には対策マニュアルを発行し、ホームページ上で公開していますので、ぜひご活用ください。
「千葉県ヤマビル対策マニュアル」
https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/documents/r2-yamabirumanyuarur2.pdf
準備が整ったら、次の休日は生き物探しに出かけてみましょうか。
日に日に勢いを増す、生命のにぎわいが、千葉の野山で待っています。
皆様から寄せられた5月の生き物写真です。写真下は団員番号です。
2025年5月の皆さまからの報告は129件でした。
内訳は、昆虫55件、鳥類34件、維管束植物18件、は虫類8件、魚類6件、両生類5件、哺乳類1件、甲殻類1件、その他の動物(扁形動物)1件でした。
また、調査対象の生き物は46件、調査対象以外の発見生物は83件でした。
参考文献
樋口大良+子どもヤマビル研究会『ヒルは木から落ちてこない。ぼくらのヤマビル研究記』山と渓谷社(2021年)
大島健夫『そうだったのか!里山のいきもの百物語』メイツユニバーサルコンテンツ(2024年)
皆越ようせい『落ち葉の下の小さな生き物ハンドブック』文一総合出版(2017年)